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名古屋地方裁判所 昭和63年(わ)2219号 判決

本籍

名古屋市緑区鳴海町字小森八番地の一

住居

同所同番地の一 サンヴィラ野並B棟二〇一号

合板販売業

梶浦貞雄

昭和一五年六月二五日生

本籍

右本籍に同じ

住居

右住居に同じ

合板販売業手伝い

梶浦尚江

昭和一六年一一月九日生

右両名に対する各所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官西本仁久出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人梶浦貞雄を罰金二八〇〇万円に、被告人梶浦尚江を懲役一年六月に処する。

被告人梶浦貞雄が右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

被告人梶浦尚江に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

国選弁護人に関する訴訟費用はそれぞれ当該被告人の各負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人梶浦貞雄は、名古屋市中川区清川町三丁目一番地において、梶浦商会の名称で合板販売業を営んでいるもの、被告人梶浦尚江は右梶浦商会の事業専従者として経理全般を担当しているものであるが、被告人梶浦尚江は、被告人梶浦貞雄の業務に関し、同人の所得税を免れようと企て、所得税の確定申告に際しては、架空仕入を計上するなどの方法により、所得の一部を秘匿した上

第一  昭和六一年分の実際の所得金額が六九二五万五五四三円であり、これに対する所得税額が三六四六万〇五〇〇円であるのに、昭和六二年三月一六日、同市熱田区花表町七番一七号熱田税務署において、同税務署長に対し、所得金額が五二一万三四〇二円であり、これに対する所得税額が六八万八〇〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額三五七七万二五〇〇円を免れ

第二  昭和六二年分の実際の所得金額が一億六六七九万八九五九円であり、これに対する所得税額が九一八七万一九〇〇円であるのに、昭和六三年三月一五日、前記熱田税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四〇七九万一三四一円であり、これに対する所得税額が一六八二万六三〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額七五〇四万五六〇〇円を免れ

もって、いずれも不正の行為により被告人梶浦貞雄の所得税を免れたものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人両名の当公判廷における各供述

一  被告人梶浦貞雄の検察官に対する供述調書並びに同被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  被告人梶浦尚江の検察官に対する供述調書並びに同被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  樋口一夫(二通)、樋口一代、松山智恵子、西川弘之、田中幸子、足立珠恵子の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の昭和六三年八月二二日付(四枚綴りのもの)、同月二三日付(二通)、同月二五日付、同月三〇日付(青色申告取消益に関するもの)各査察官調査書

判示第一の事実につき

一  熱田税務署長作成の証明書二通(一通は被告人梶浦貞雄の昭和六一年分の所得税の確定申告書写しが、他は同被告人の同年分の所得税の修正申告書写しがそれぞれ添付されたもの)

判示第二の事実につき

一  熱田税務署長作成の証明書二通(一通は被告人梶浦貞雄の昭和六二年分の所得税の確定申告書写しが、他は同被告人の同年分の所得税の修正申告書写しがそれぞれ添付されたもの)

一  大蔵事務官作成の昭和六三年八月二二日付(八枚綴りのもの)、同月二四日付、同月三〇日付(二通で、一通は減価償却費に関するもの、他は譲渡所得に関するもの)各査察官調査書

(法令の適用)

被告人梶浦貞雄の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項、二四四条一項に該当するところ、免れた所得税額がいずれも五〇〇万円を超えるので情状により各罪の罰金額につき同法二三八条二項を適用し各罰金額は免れた所得税額に相当する金額以下とし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪の右罰金額を合算した金額の範囲内で同被告人を罰金二八〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置し、同被告人の国選弁護人に関する訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項本文によりこれを同被告人に負担させることとする。

被告人梶浦尚江の判示各所為はいずれも所得税法二三八条(一項のほか二項を適用する理由は前記のとおり。)、二四四条一項に該当するので、各所定刑中各罪について懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとし、同被告人の国選弁護人に関する訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項本文によりこれを同被告人に負担させることとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 遠山和光)

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